工藤真希子 Official Website

2016年06月28日

下げたら見えたもの

昨日のこちらのコンサート、終了いたしました!

昨日は朝から仕事で、昼も仕事で笑、眠いけど寝られないという状況の中のぞんだ演奏会でした。
そのためなのか準備不足なのか、自分でもびっくりするような音間違いなどをしたりして、
本当に反省しきりだったのですが…。

そんな中、奇跡的な出来事が。
ショスタコーヴィチのプレリュードとフーガの1番プレリュードを弾いていた時に、
ふと、今だったら重心を下げても大丈夫かも、と思ったのです。

本番の演奏中は緊張のせいか、とかく重心が上がりがちなのですが、
一度重心が上がってしまうと演奏中にそのスタイルを変えることに恐怖感があったり、
変えるタイミングを逃してしまったりして、
上がってると気づいているのに直せない、ということが続いていたのです。
ですが、昨日本番中弾いている時に、ふと今なら大丈夫かもと思って、下げてみたんです。

私、鍵盤を見ていると暗譜が飛ぶので笑、目をつぶって演奏することが多いのですが、
(目が細いから演奏中の写真に目が写っていないわけではないのですよ笑)
重心を下げていったら、見えている(見えてないけど)視野が広がって、
ステージに当たっている光の明るさが目の裏に入ってきたのです。
その瞬間、真っ黒な世界がぱぁっと白くなって。

この曲集、ショスタコーヴィチがタチアナ・ニコラーエヴァのバッハの演奏に感銘を受けて描かれたのですが、
ショスタコーヴィチのニコラーエヴァの奏でる音楽に対する想いって、
こういう感じだったのかなとふと思いました。
一寸先は闇のような真っ暗な世界の、あたたかい光のような存在。

ニコラーエヴァという人は、インタビューなど見ていると感じるのですが、
とにかくチャーミングというか、明るくて、かわいくて、良くしゃべる、太陽みたいな人。
…日本だと、ひげを生やした強面のおばさんが赤い口紅つけて、みたいなイメージかもしれませんが笑。

ちょっと脱線してこのひげのお話をすると、
実はロシア正教では神が与えてくれたものはそのままにする、という教えがあり、
ひげも剃ったらいかん、みたいな考え方があるのです。
その名残?なのか、顔に刃物を当てることが縁起が良くないと信じているお年寄りも多く、
女性も鼻と口の間に毛が生えて来ても剃らなかったりします。
決して男装趣味とかそういうことではなく笑

ショスタコーヴィチのプレリュードとフーガもバッハに倣って24曲あって、
その中には厳格なもの、ミステリアスなもの、コケティッシュなものなど、
様々なキャラクターの作品がありますが、
1番目の1曲目の作品が、こんなにも温かくて光に満ちたものだったのかと思うと、
ショスタコーヴィチの描きたかったものの感覚が見えたような気がしました。

ほんの3〜4分の曲なのですが、響きの良いリリスホールで、
白い光に包まれて、なんだかずっとこの時が続けばいいのに、と思いながらの演奏でした。
こういうの、忘れたくないなと思います。
…それ以外の曲のミスに関しても、忘れてはならないとは、思っています。笑

ということで、ご来場下さいました皆様、本当にありがとうございました。
今後とも、精進、そして邁進いたします!
posted by makiko-kudo at 13:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 非日常

2016年06月18日

【告知】The Summer Joint Recital

次はこちらに出演致します!
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こちらのコンサート、コロラド大学で教鞭をとっていらっしゃる、
ディヴィド・コレヴァーさんが来日されるということで、
6月27日(月)19:00〜、横浜市栄区民文化センター《リリス》にて、
なんというか、前座の一画を務めさせていただきます。

最近、自分の中の音楽観みたいなものが揺らぐことがあって、
自分の信じてきたものは本当に良いものだったのか?といった思いがむくむくと出てきて、
ちょっとつらい毎日ではあるのですが、
たぶんこれを抜けて、あれもいいかもこれもいいかも、でも結局自分を信じるしかないと思えたときに、
音色の引き出しが増えて、ひとつ成長が見られるのではと、
自分のことながら少し楽しみでもあります。

私は、チャイコフスキーの四季から1月と10月、
ショスタコーヴィチのプレリュードとフーガ1番、
シチェドリンのアルベニス風に、を弾きます。
いつもながら、なんでこの曲選んだかなーと思うのですが、
上に書いた通り、たぶん27日くらいには「抜けてる」はずですので笑、
どうぞお楽しみに、いらして頂ければと思います。

チケットは上↑のcontactのところから、お気軽にメッセージ下さい!
よろしくお願い致します(^^)
posted by makiko-kudo at 11:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 告知

2016年06月16日

恐怖の行進

6月11日の第2回マイスキーヴェーチェル《ショスタコーヴィチに捧げる》、無事終了しました!

今回はソヴィエト時代の作曲家ということで、
ショスタコーヴィチと、アルメニア系の作曲家たちを取り上げて演奏致しました。

当日は、演奏前に曲についていろいろお話する時間があって、
下手すると演奏時間より喋りの方が長かったのではないかという疑惑も残りましたが笑、
私達の知識をお客様たちにも一緒に持ってもらうことで、
さらに曲を楽しんでいただけたらとの思いからでした。

自分のソロはさておき、デュオに関しては、
2台ピアノってこんなにぞくぞくするんだと、軽く感動すら覚えるくらいでした。

特にショスタコーヴィチは、今回のデュオの相方である吉永哲道さんの理解度が凄かったので、
私はそれに乗っかるだけだったのですが、
演奏後にお客様から「怖くて泣けたのは初めて」と言って頂きました。してやったりです笑

哲道さんがついていたゴルノスタエヴァ先生曰く、
「ショスタコーヴィチの音楽には、権力を賛美する側面と、権力を恐れる側面が同時にある」のだそうです。
当然、権力というのは、当時のソヴィエトの最高権力者、スターリンであり、
ショスタコーヴィチはずっとそれを讃えながらその陰におびえ、翻弄されながら生きていた人なのです。

今回コンチェルティーノを弾いたのですが、
私的には脳天気な音楽だと思っていたのです。軽音楽というか。
でも、その奥底に、権力への恐れが含まれているのだとしたら、と考えたら、
一気に曲の理解が深まったのです。この曲、本当は怖い曲じゃん、と。

恐怖の土台の上で、明るく行進する人々。
顔は笑顔でも、実は足元が怖くて仕方がない。
その足元が突然手を伸ばしてきて、自分を引きずり込むかもしれない。
それでも、今は前を見て笑顔で行進。
ソヴィエトって、本当に大変な時代だったんだなと、今さらながら思います。

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哲道さんと、バスの渡部智也さんと。逆両手に花。笑

私自身、実はデュオってそこまで得意ではなくて、
ソロの方が、自己完結できるので弾きやすいと思っていたし、
デュオするなら自分が2人欲しいとか思っていたのですが笑。
たぶん、自分と違う要素が音楽に入り込んでくるのが嫌だったのだと思います。

しかも今回の哲道さんは、私とは音楽愛が90度くらい違う人。
同じ場所に留学していたのに、全然違うものを持った人。
さてどうなるかな、と思っていたのですが、
合わせていくうちに、私が思いつかないような意見をもらえたりとかして、
違うものと違うものがぶつかって、新しい発見があるというか、
ある意味あらぬ方へと向かうからおもしろいんだなと初めて分かりました。

来年あたり、ブラームスの2台が出来たらねという話になっていて、それはもっとバトルになりそうですが笑、
それもそれで、楽しみだと思えるようになったあたり、
今回のコンサートでの私の成長だと思います。

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おまけ画像。
打ち上げで行った、渡部さんたち御用達の鹿児島・沖縄料理のお店で。
先に帰らなきゃいけない、スタッフをして下さった女性の先輩のリクエストで、
最初のビールの次に頼んだ白くまを見て、「ビールのあてに氷菓はちょっとね」と渋い顔をする哲道さん。
ちゃんと白くまの形をしていたんだと、この写真を見て気づきました。笑

というわけで、ご来場下さった皆様、本当にありがとうございました!
posted by makiko-kudo at 11:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 非日常
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